
欠けた盃に汗ばむ指先
欠けた盃に汗ばむ指先
窓の外では、絶え間ない虫の声が夜に染み込んでいた。老舗旅館の廊下は消灯後の静けさに包まれている。硫黄の匂いが、夏の湿った空気にかすかに滲んでいた。
国語科教師の志乃は、生徒の点呼名簿を小脇に抱え、隣室の襖の前で立ち止まった。体育科教師の亮介がこの学校に赴任してきてから、今年で四年目の修学旅行になる。着任して間もない一年目、初めての引率を終えた夜、労をねぎらう酒の席で、緊張のあまり盃を取り落として欠けさせてしまった亮介。「欠けたものはもう出せないから」と苦笑いする女将からそのまま譲り受けた盃を前に、志乃は「じゃあ、これからは見回りが遅かった方がこの盃で酒を注ぐ係ね」とからかった。それが、二人だけの夜の儀式の始まりだった。
以来、消灯後の生徒見回りで先に受け持ちクラスを終えた方が、廊下の隅の布団部屋で待ち、負けた方が地元の酒屋で買い足した熱燗をあの欠けた盃に注ぐ。学年主任の椅子を巡って表向きは互いを牽制し合う二人にとって、この時間だけが唯一、素の顔を見せられる場所だった。
今年もまた、志乃の鞄の底にはあの盃を忍ばせていた。ただ、今夜の彼女には亮介にまだ告げていないことがあった。来春、彼女はこの学校を離れ、遠方の分校へ異動することが内定している。

布団部屋に忍び込む指先
襖を引いて入ってきた亮介に、志乃はすでに鞄から取り出していた盃を差し出す。
「今夜も、遅かったわね」
亮介は詫びるように苦笑しながら胡座をかき、懐に忍ばせていた小さな徳利を傾けて盃を満たした。二人の指先が触れ合った瞬間、いつもより長くその体温が重なった。
「志乃さん、今日はやけに大人しいですね」
「……そう見える?」
言葉を濁す志乃の手から盃を取り上げ、亮介は畳に置いた。「四年も見てれば、嘘くらいわかりますよ」その声には、これまでの牽制の色がなかった。亮介の手が志乃の頬に伸び、そのまま二人の唇が重なる。四年間、互いに一度も踏み越えなかった一線を、どちらからともなく越えていった。
浴衣の合わせ目から亮介の手が滑り込み、志乃の下着越しに割れ目をなぞる。すでに湿り気を帯びていたそこから、じわりと熱い感触が指先に伝わった。
「亮介くん……そこ、だめ……」
「だめって言うわりに、指が離れてほしくなさそうな顔してますよ」
亮介は下着の脇から直接指を這わせると、蜜がくちゅりと音を立て、浅瀬をくすぐった。志乃は背中を反らせ、彼の肩に爪を立てた。彼の中指が沈み込むと、四年分の距離を埋めるように、志乃の内側がそれをきつく締め付ける。
「ん……っ、そこ……もう一本……」
求めに応じて亮介の指が二本重なると、志乃の腰が浮き上がる。亮介の指の腹が内壁の浅い部分を擦り上げるたびに、溢れた蜜が彼の指先を濡らしていった。

熱を帯びる肌と、乱れていく吐息
「亮介くん、来て……」
志乃が浴衣の帯を自ら解くと、白い肌が行灯の明かりに浮かび上がった。亮介は積まれた布団の一枚を引き出し、志乃をそっと横たえた。自らも手早く前をくつろげて熱を露わにすると、彼女の間に身を滑り込ませ、猛った切っ先を彼女の入り口にあてがう。
「本当に、いいんですか」
「今更、聞かないで」
亮介が腰を沈めると、熱い肉が狭い道を押し広げながら奥へと進んでいく。
「あぁっ……!」
志乃の背が浮き、彼女の指先が敷布を強く掴んだ。亮介は最初こそゆっくりと様子を窺うように腰を送っていたが、志乃が脚を絡めてくると、律動を速めていく。パン、パンと肌がぶつかる音が、布団部屋の壁に吸い込まれていった。
「志乃さんの中、四年間ずっと知りたかった……」
「知って、どうするの……」
「離したくなくなる、に決まってるでしょう」
その言葉に、志乃の内側が大きく収縮する。亮介は彼女の腰を抱え、自身の猛りを最奥まで押し広げた。子宮口を押し上げられる感触に、彼女は声にならない悲鳴を上げ、大きく身体を震わせる。
「もう……イく……っ」
限界を悟った亮介が腰を引くと同時に、彼の熱い迸りが志乃の白い太腿に飛び散った。荒い呼吸のまま、二人はしばらく布団の上で折り重なっていた。

盃に残る、二人だけの続き
呼吸が整うと、志乃は乱れた浴衣の襟を直しながら、傍らに転がる盃に目をやった。小さな欠けが、行灯の明かりに鈍く光っている。
「亮介くん。私、来春でこの学校を離れることになったの」
亮介は一瞬息を止め、それから静かに志乃の手を取った。
「知ってます。職員室で耳にしました」
「知ってて、黙ってたの?」
「志乃さんの口から聞くまでは、聞かなかったことにしようと思って。……それに、もう一つ黙っていたことがあります」
「何のこと?」
「学年主任の話、僕は辞退すると校長に伝えました。志乃さんがいなくなる学校で、あの椅子に座る意味なんてありませんから」
志乃は少しの間黙り、それから盃に残った、すっかり冷めた熱燗を飲み干した。
「馬鹿ね。あなたが継ぐべき椅子でしょう、あれは」
「志乃さんに勝つためだけに欲しかった椅子です。相手がいなくなるなら、もう要りません」
「分校でも、修学旅行の引率はあるでしょう?」
「……その盃、持っていく気ですか」
「もちろん。欠けたところが、ちょうど私の唇に合うのよ」
その一言に、亮介の強張っていた肩から力が抜けた。二人はしばらく黙ったまま、盃の欠けを指先でかわるがわるなぞった。
「見回り対決の勝ち負けは、もうつかめなくなりますね」
「そうね。だから、これからは負けた方が分校まで会いに行く係にしましょう」
「それなら、僕はわざと負け続けます」
窓の外では、涼やかな虫の声が響いていた。二人は薄闇の中、次に会う季節を静かに数え始めていた。
この物語は完全なフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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おかえり
著者: 雲呑めお
ジャンル: 単行本, 3P・4P, OL, ウェイトレス, エステ, お姉さん, カーセックス, カップル, 夜のお仕事・風俗嬢, クンニ, スレンダー, セーラー服, ツンデレ, フェラ, めがね, ラブ&H, ラブコメ, 学生服, 汗だく, 騎乗位, 逆ナン, 姉・妹, 手コキ, 処女, 女子校生, 制服, 体操着・ブルマ, 中出し, 童貞, 美少女, 美乳, 野外・露出, 幼なじみ, 乱交, 恋愛, 羞恥

作者より月森 潤

学年主任の座を巡って牽制し合う同僚だからこそ、二人の間に積み重なった四年間を、盃の欠けという小さな傷跡ひとつに託して描きたいと思いました。着任したばかりの亮介が緊張から盃を欠けさせてしまった失敗を、志乃があえて「負けた方が注ぐ係」というルールに変えてしまう場面には、彼女なりの不器用な優しさを込めています。 来春の転任を志乃がなかなか切り出せずにいたのも、二人の関係が表向きのライバル関係を装うことで、かえって本音を言いにくくしていたからです。最後に志乃が「欠けたところが、ちょうど私の唇に合うのよ」と告げる場面には、傷や別れさえも二人だけの続きに変えてしまう強さを込めました。 最後まで読んでいただきありがとうございました。
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