#幼なじみ×再会

朱い花びらが舞う庭の奥で

読み上げ
0:00

朱い花びらが舞う庭の奥で

取引先との会食が料亭で終わり、客人を見送ったあと、ミコとボディガードの糸は自然と庭へ流れ出た。人払いが済んだ夕暮れの日本庭園は、空気の重みを含んで静まり返っていた。

東屋の縁側に腰を下ろすと、池の赤鯉が水面を割る音だけが響き渡る。ここに来るのは何年ぶりだろう。子供の頃、夕暮れどきになるとよく二人でこの縁側に並んで座った。糸は何かを話すわけでもなく、ただミコの隣にいつもいた。それだけで、なぜかいつも安心できたのだと、今になって思う。

「久しぶりですね、ここ」

彼の声は静かな庭に溶け込むように、低く響いた。

「そうね」

それだけ返して、ミコは池を見つめた。あの頃と何も変わっていない場所で、隣にいる人だけが変わった、正確には、変わったのは距離だ。子供の頃は当たり前だったこの近さが、今はどこか息苦しいほど意識される。

彼の手が、ふとした瞬間にミコの太ももへ添えられた。薄手のスカートを伝って、その熱さが肌へと染み入っていく。ボディガードとして彼女の隣に立ち続けてきた三年間、こんなふうに触れてきたことは一度もなかった。だからこそ、ミコは動けなかった。

記事のイメージ画像

抑えてきたものが、溶け出す夜

幼い頃から、彼はいつもこうだった。言葉は少ないのに、そこにいるだけで全部わかってくれているような気がした。だからかえって、この三年間が苦しかった。側にいるのに遠い。いつも背後にいるのに、触れることができない。

「まだ、外は明るいですよ」

低い声が耳に届く。ミコは慌てて膝を抱えようとするが、彼の掌はその腰を捉え、身動きが取れないほど強く固定した。

「い、いつでも……大丈夫だけど」

嘘だ。彼がいるだけで、全身の血が上気し、下半身が湿り始めていた。指先が骨格に沿って滑り、下腹部へと迫る。冷たい夕風に触れる首筋と、掌から伝わる熱さの対比に、ミコの呼吸は乱れ始める。

「君は、いつも必死なんだ」

彼が囁きながら、ミコの頬を撫で上げる。その感触は絹のようだが、力加減は甘やかで執拗だ。指先が耳たぶを掴むと、頭頂部から足先まで快感が広がった。ミコは思わず喘ぎ声を漏らし、体が彼の方へと傾く。

「いとさん……」

名前を呼んだ瞬間、彼の目が輝いた。深い闇のような優しさと、抑えてきた熱が混ざり合う眼差し。彼はゆっくりと身体を寄せ、唇を重ねる。最初は優しく舐め合うようなキスだったが、次第に深みを増し、ミコの舌を絡め取るように深く吸い上げた。甘く絡み合う舌が離れ、静かな庭園に微かな水音だけが響く。

「んあ……」

胸の奥から溢れる熱さが、喉元まで込み上げてくる。彼の腕が腰を回し、ミコを自分の膝の上に跨がせる。スカートの裾が捲れ上がり、夜風が露わになった肌を撫でる。ミコの指が彼の襟を掴むと、彼はそれを受け止め、ゆっくりと上着のボタンを外していく。

「待って……ここは」

外から誰かが通るかもしれない。そう思いながらも、ミコ自身の身体の方が先に反応する。彼の手が衣服の内側に差し入れられ、胸の膨らみを包み込む。指先が直に乳首を弾くと、ミコは大きく息を吸い込み、腰を浮かせる。思わず漏れた吐息が縁側に広がり、羞恥で頬が燃えるように赤くなる。

「見てごらん。君の体が、どれほど私を求めているか」

彼がミコの耳元で囁きながら、もう一方の手を下腹部へ滑らせる。指先が直接その敏感な場所に触れると、ミコはびくりと震え、膝から力が抜けるように崩れ落ちた。真珠色の汗が額に滲み、煌めく瞳には涙さえ浮かんでいる。嫌だと思ったはずなのに、彼が存在する空間だけが安堵の源だった。

「ねえ……もっと、満たして」

自分の声に驚きながら、ミコは彼を引き寄せる。甘えと欲求が混ざり合ったその姿を見て、彼は静かに微笑んだ。腰を下ろすと、彼のものが一気に奥へと押し入ってくる。全身を満たす充実感がじわりと広がった。彼の掌で胸を揉みしだかれながら、ミコは頭の芯が甘く痺れていくのを感じた。

繰り返される激しい動きに、意識が揺らぐ。子供の頃から積み重ねてきた時間が、快楽として身体全体へ伝わっていく。下腹部が痙攣し、灼けつくような絶頂感が全身を震わせる。彼はミコの首筋に唇を押しつけ、同時に奥深くまで押し入る。

重なり合った余韻が残る中、彼はミコの身体をしっかりと抱き寄せ、密着したまましばらく呼吸を重ねていた。汗に湿った素肌が離れがたく重なり合ったまま、繋がりの奥からじんわりと熱が抜けていった。ミコは彼の背中に回した腕に力を込め、このままずっと繋がっていたいと願うように顔を埋める。たおやかに彼が腰を引くと、絡み合っていた素肌がひたりと離れ、繋がりがふわりと解けていった。夜風がひやりと二人の間を通り抜け、火照った素肌がふるりと震えた。

記事のイメージ画像

朱い花びらが舞う庭の、静かな灯り

東屋の柱に寄りかかり、二人はしばらく黙ったまま、乱れた呼吸が静まるのを待っていた。

池に朱い花びらが舞い落ちる。庭は何も変わっていない。ただ、ミコの胸の中だけが、今夜を境に少し違って見え始めていた。

「ミコさん」

彼が、低く呼んだ。

「何?」

「……怖くなかったですか」

ミコはしばらく黙って、それから小さく笑った。

「全然。あなたの隣だから」

彼からの返事はなかった。ただ、彼の肩に預けていたミコの頭を、片手でそっと包み込んだ。言葉の代わりに、ずっとそうしてきた人の、いつもの答えだった。

子供の頃から変わらない景色の中で、変わったのは距離だけだ。今夜それが消えた。朱い花びらが池に静かに舞い落ち、二人の沈黙の上に積もっていく。胸の奥で温かな光が灯り、ミコはもう一度、彼の肩に深く額を押しつけた。

記事のイメージ画像

この物語は完全なフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

おすすめアイテム【PR】

※アフィリエイトリンクを含みます。

作者より月森 潤

月森 潤

静まり返った日本庭園という舞台に、子供の頃から積み重ねてきた時間の重さをそっと重ねて書きました。幼なじみという親密さと、ボディガードと雇い主という職業的な距離感。この二つが混ざり合う瞬間に、たまらなく惹かれたのだと思います。 特にこだわったのは、「側にいるのに触れられない三年間」という抑圧の蓄積です。子供の頃は当たり前だったはずの近さが、今はひどく意識される、そのもどかしさが夕暮れの庭でついに折れる瞬間を書きたかったのです。冷たい夜風と肌から伝わる熱さのコントラスト、外に誰かいるかもしれないという緊張感が、かえって二人の感覚を鋭くさせる……そんな背徳的な空気感も大切にしました。 読んでいただきありがとうございました。

関連する官能小説

厩舎の影に溶ける真珠色

厩舎に響く聞き覚えのある嘶き。十四歳から乗馬を教わった「先生」の隼人と十年ぶりに再会した芽衣は、彼が今では同じ会社の新人として現れたことに戸惑う。老いた愛馬の預託料を十年間払い続け、色褪せたミサンガを袖口に隠していたと知った夜、積み重ねてきた時間の重みがようやく形を持って動き出す。幼なじみ再会ロマンス。

続きを読む →
#幼なじみ×再会

幼なじみの毒に溺れる夜

祖母の家の屋根裏部屋にあった薔薇の壁紙を、大人になってから思いがけない場所で再び目にする。会員制バーの個室で目を覚ました三崎茜の腕を抱いていたのは、十年前に転校していった幼なじみ、拓海だった。子どもの頃に交わした指切りの約束も、彼が家を出た日の記憶も、時間が止まったように蘇る。薄闇の中で再会した二人は、積もった沈黙を埋めるように肌を重ねていく。幼なじみ再会ロマンス。

続きを読む →

鼓動が重なる病室の静寂

中学時代に転校でいなくなった初恋の人と、十二年ぶりに病室で再会した。担当医として現れた彼は、あの頃と同じ照れ隠しの仕草で、毎夜私の病室を訪れ続ける。言葉を重ねるたびに埋まっていく空白の年月。そして消灯後の静寂の中、彼はついに、十二年間言えなかった言葉を告げた。

続きを読む →

関連するSEXコラム

一覧を見る →
本作品は成人向けフィクションです。18歳未満の方の閲覧は禁止されています。