
冷たきタイルと滲む汗
深夜二時、従業員専用の共用トイレで落ち合うふたりは、社内には明かせない恋人同士だ。部署合同の会議中、机の下から始まった指を三度叩く合図を胸に、資料の直しで終電を逃した彼女と、見回りの合鍵を持つ彼が、清掃用のシートの上で束の間の逢瀬を重ねる。次の清掃員が戻るまでという限られた時間の中で、ふたりだけの符丁が睦み合う熱をいっそう深めていく。
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深夜二時、従業員専用の共用トイレで落ち合うふたりは、社内には明かせない恋人同士だ。部署合同の会議中、机の下から始まった指を三度叩く合図を胸に、資料の直しで終電を逃した彼女と、見回りの合鍵を持つ彼が、清掃用のシートの上で束の間の逢瀬を重ねる。次の清掃員が戻るまでという限られた時間の中で、ふたりだけの符丁が睦み合う熱をいっそう深めていく。
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病院帰りのスクラブ姿のまま、彼女が予約するのはいつも同じ、しゃぶしゃぶ店の奥の半個室。薄い布の仕切り一枚を隔てただけの空間で、彼女は迷いのない指先で彼の輪郭をなぞり始める。何度も確かめてきた形、覚えているほくろの位置。積み重ねてきた行為の一つひとつが、湯気の向こうで声を殺した情事へとなだれ込んでいく。
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窓から差し込む夕日が、アトリエの床に積もった埃を金色に染める。彼女がこの部屋の合鍵を渡しているのは、恋人であり同じ画塾出身でもある男ただひとり。互いの個展のたび作品を撮り合ってきた二人は、壁際に隠された一枚の未完成画をきっかけに、乾かない絵具の匂いの中で抑えていた熱をほどいていく。
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男は工具箱の蓋をカチャリと閉じた。管理会社の一括契約を使わず、彼女はいつも男の携帯に直接連絡をよこす。呼び出す理由はいつも配管の不調なのに、男はいつからか、修理そのものより、彼女がグラスの氷を控えめに鳴らす音を聞くために来ているような気さえしていた。蝉が鳴きしきる午後だった。…
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深夜二時、太平洋を渡る大型フェリーの客室で、紗智子は亡き夫が機関士として乗っていた航路を、命日を前にした今夜もう一度たどっていた。それを知った隣人の健一は、妻に出張だと告げて同じ便に乗り込む。一年半かけて積み重ねてきた二人だけの時間が、海の上でだけ許された一夜へと…
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大学の手芸サークルが部室として使う、通称「家庭科室」。彼女が入部してから一年半、運針を手ほどきしてくれた先輩と重ねてきた放課後は、去年の学園祭をきっかけに秘密の恋人同士の時間へと変わっていた。だが先輩が運営を退くのはもう来月。月例会のあとの後片付け当番だけを口実にした二人きりの時間で、指先に残る胼胝に触れながら、抑えてきた熱がほどけていく。裁ちばさみが光る机の上で交わされる、約束と快楽の行方は…
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「雨が降るたび、彼女は荷物を頼む。それが始まりだった」。八ヶ月前の雨の夜に出会った配達員と、高層マンションに暮らすOL・倉田和子。言葉にはしないまま積み重ねてきた小さな接触、沈黙の約束。そして十一回目の雨の夜、二人は初めて配達服の向こうへと手を伸ばす。雨音だけが響く密室で解けていく理性と、八ヶ月分の渇きが溢れ出す濃密な逢瀬。「傘は貸せません」という彼女の言葉の意味を、彼はとっくに知っていた。
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OL時代から一年以上、毎月欠かさず指名し続けた男がいた。結婚式を終えた夜、白無垢のまま彼女はかつての指名客が待つ個室へ向かう。積み重ねた時間と言えなかった言葉が、帯の解ける瞬間に静かに解き放たれていく。
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二年間の積み重ねが、この夜ついに溢れ出した。職場の上司・木下と部下の志織、プロジェクトの相談という名目で始まった夜は、エアコンの唸りの中、互いに秘めていた熱を解き放っていく。
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付き合いだして一年半、同棲して半年。二人の部屋には、出会いから今日までの時間が染み込んでいる。休日の午後、何気なく交わった視線が熱を持ち始める。知り尽くしているはずの相手なのに、積み重ねた時間の分だけ、視線の重さは増している。
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